ミョウバンと重曹、どちらも白い粉で見た目は同じように見えますが、その違いをご存知ですか?
料理のアク抜きや風呂掃除など、使い道が似ているため、どっちを使えば良いか迷う方も多いかもしれません。また、消臭効果にも注目が集まっており、ワキガに効く?と噂されたり、足の臭いを消す方法として脇にミョウバンをスプレーする方法が話題になったりしています。
ミョウバンの代わりに重曹を使えるのか、混ぜるとどんな反応が起こるのか、気になる点は多いでしょう。
この記事では、そんなミョウバンと重曹の違いを徹底解説し、それぞれの特性に合った最適な使い方をご紹介します。
- ミョウバンと重曹の基本的な性質の違い
- 消臭効果(ワキガ・足)における使い分け
- 料理や掃除などシーン別の最適な活用法
- 混ぜた場合の注意点と化学的な反応

ミョウバンと重曹の性質における違い
- 同じ白い粉でも性質は正反対
- 消臭効果はどっちが優れている?
- ワキガに効く?と言われる理由
- 脇にミョウバンをスプレーする効果
- 足の臭いを消す方法での使い分け
同じ白い粉でも性質は正反対

ミョウバンと重曹は、スーパーなどで手軽に購入できる白い粉末という点でよく似ていますが、その化学的な性質は全くの正反対です。この根本的な違いを理解することが、両者を正しく使い分けるための第一歩となります。
最大の違いは、水に溶かしたときの液性、つまりpH(ペーハー)にあります。
ミョウバンを水に溶かすと弱酸性を示します。一方、重曹(炭酸水素ナトリウム)を水に溶かすと弱アルカリ性を示します。人間の肌や多くの食品、そして汚れや臭いにも酸性・アルカリ性の性質があり、この「反対の性質で中和する」という化学の基本原則が、ミョウバンと重曹の様々な効果の源泉となっているのです。
項目 | ミョウバン | 重曹 |
---|---|---|
性質 | 弱酸性 | 弱アルカリ性 |
主成分の例 | 硫酸アルミニウムカリウム | 炭酸水素ナトリウム |
得意なこと | アルカリ性のものを中和 菌の繁殖を抑える(殺菌) 組織を引き締める(収れん) | 酸性のものを中和 油汚れを分解する(乳化) 研磨作用 |
このように、見た目が似ていても中身は全くの別人だと考えると分かりやすいです。この性質の違いを知ることで、なぜ消臭や料理、掃除でそれぞれ異なる効果を発揮するのかが見えてきます。
消臭効果はどっちが優れている?
「消臭」という目的において、ミョウバンと重曹のどちらが優れているかという問いの答えは、「対象とする臭いの種類による」というのが正解です。
前述の通り、ミョウバンは酸性、重曹はアルカリ性という逆の性質を持っています。消臭の基本的なメカニズムは、この性質を利用した「中和反応」です。つまり、アルカリ性の臭いには酸性のミョウバンが、酸性の臭いにはアルカリ性の重曹が、それぞれ化学的に反応して臭いを打ち消すのです。
- ミョウバンが有効な臭い(アルカリ性):汗や尿の分解で発生するアンモニア臭、タバコの臭い、魚の生臭さなど。
- 重曹が有効な臭い(酸性):汗や皮脂が酸化した体臭、足の蒸れた臭いの原因となるイソ吉草酸、生ゴミの腐敗臭など。
例えば、トイレのアンモニア臭にはミョウバン水のスプレーが効果的ですし、皮脂汚れが原因の下駄箱や靴の臭いには重曹を置くのが適しています。どちらか一方が万能というわけではなく、臭いの原因を見極めて適切な方を選ぶことが、効果的な消臭への近道と言えるでしょう。
ワキガに効く?と言われる理由

ミョウバンや重曹が「ワキガに効く」と言われることがありますが、これは半分正しく、半分は注意が必要です。結論から言うと、どちらもワキガを根本的に治療するものではなく、あくまで一時的な臭い対策としての効果が期待できる、という位置づけになります。
「治るわけじゃないんだ…」とがっかりしないでください!アプローチの違う2つの方法を知れば、日々のケアにきっと役立ちますよ。
ミョウバンには、主に2つの働きがあります。
- 殺菌・抗菌作用:ワキガの臭いは、アポクリン汗腺から出る汗を皮膚の常在菌が分解することで発生します。ミョウバン水で肌を弱酸性に保つことで、アルカリ性を好む原因菌の繁殖を抑える効果が期待できます。
- 制汗(収れん)作用:ミョウバンには、汗腺を引き締めて汗の分泌を抑える働きがあります。汗の量が減ることで、菌のエサが減り、結果的に臭いの発生を抑制します。
つまりミョウバンは、「臭いの発生源」にアプローチする方法です。
一方、重曹の働きは非常にシンプルです。ワキガの臭いの原因物質には酸性の性質を持つものが含まれているため、弱アルカリ性の重曹がその臭いを中和して、一時的に和らげる効果があります。
こちらは「発生してしまった臭い」への対症療法的なアプローチと言えます。
重曹はあくまで臭いを中和するだけで、菌の繁殖を抑える効果は期待できません。また、どちらの方法も効果には個人差があり、肌に合わない場合もあります。症状が気になる場合は、専門の医療機関に相談することをおすすめします。
脇にミョウバンをスプレーする効果
脇の臭い対策として、ミョウバンを水に溶かした「ミョウバン水」をスプレーする方法は、古くから知られている自然なデオドラントケアです。この方法には、主に「制汗」と「抗菌」という2つの明確な効果が期待できます。
前述の通り、ミョウバンが持つ「収れん作用」が、汗の出口である汗腺をキュッと引き締めます。これにより、汗の分泌量そのものを物理的に抑えることができるのです。汗の量が減れば、衣服の汗ジミが気にならなくなるだけでなく、臭いの原因となる菌の繁殖も抑えられます。
さらに、ミョウバン水によって肌の表面が弱酸性に保たれることが重要なポイントです。臭いの原因となる雑菌の多くはアルカリ性の環境で活発に繁殖するため、肌を弱酸性にすることで、菌が活動しにくい環境を作り出し、臭いの発生を元から防ぐ効果が期待できるのです。
簡単!ミョウバン水の作り方
ご家庭で簡単に作れるミョウバン水(原液)のレシピをご紹介します。
用意するもの:
- 焼きミョウバン:15g程度
- 水道水:500ml
- 空のペットボトル(500ml用)
作り方:
- ペットボトルに水道水と焼きミョウバンを入れる。
- フタをしっかり閉めて、よく振って混ぜる。
- 白く濁りますが、そのまま一晩〜数日置くと、ミョウバンが溶けて透明な液体になります。
使い方:
完成したミョウバン水は原液です。肌に使う際は、必ずこの原液を水道水で10倍程度に薄めてから、スプレーボトルなどに入れて使用してください。お風呂上がりの清潔な肌に使うのがおすすめです。
肌に使用する際は、事前に腕の内側などでパッチテストを行い、異常が出ないことを確認してからご使用ください。
足の臭いを消す方法での使い分け
一日中靴を履いて蒸れた足の臭いは、多くの人が抱える悩みの一つです。この足の臭い対策においても、ミョウバンと重曹は有効ですが、臭いのタイプによって使い分けることで、より高い効果を発揮します。
実は、足の臭いには大きく分けて2つのタイプがあると言われています。
臭いのタイプ | 主な原因物質 | 臭いの特徴 | 有効な対策 |
---|---|---|---|
酸性タイプ | イソ吉草酸など | 納豆のような、蒸れた酸っぱい臭い | 重曹(アルカリ性で中和) |
アルカリ性タイプ | アンモニア | ツンとくる刺激臭 | ミョウバン(酸性で中和) |
一般的な蒸れ臭い(酸性タイプ)には重曹
足の裏の汗や角質、皮脂をエサにして雑菌が繁殖し、「イソ吉草酸」という物質を発生させることが、最も一般的な足の臭いの原因です。このイソ吉草酸は酸性の性質を持つため、弱アルカリ性の重曹が効果的です。
- 重曹足湯:洗面器にお湯を張り、大さじ2〜3杯の重曹を溶かして10分ほど足をつける。角質を柔らかくする効果も期待できます。
- 靴の消臭:履かない靴の中に、粉末のままの重曹を入れた布袋などを入れておくと、臭いと湿気を吸い取ってくれます。
疲労臭・ストレス臭(アルカリ性タイプ)にはミョウバン
体調不良やストレス、疲労が溜まると、体内で発生したアンモニアが分解しきれず、汗として排出されることがあります。これが、ツンとした刺激臭の原因です。このアンモニアはアルカリ性のため、弱酸性のミョウバンが有効です。
- ミョウバン水スプレー:10倍に薄めたミョウバン水を足に直接スプレーする。制汗作用と殺菌作用で、臭いの発生を予防します。
- ミョウバン足湯:洗面器のお湯に薄めたミョウバン水を入れ、足湯をするのも効果的です。
用途でわかるミョウバンと重曹の違い
- 料理やアク抜きでの使い道
- 風呂掃除での活用法
- ミョウバンの代わりに重曹は使える?
- 混ぜると起こる化学反応とは?
- ミョウバンと重曹の違いを総括
料理やアク抜きでの使い道

ミョウバンも重曹も、食品添加物として料理、特にアク抜きに使われることがあります。しかし、ここでも両者の性質の違いから、目的と効果が全く異なります。
同じ「アク抜き」でも、仕上がりが全然違うんです。食材の特性に合わせて選ぶのがプロの技ですよ!
重曹の役割:食材を柔らかくする
重曹は、山菜やたけのこなど、繊維が硬い食材のアク抜きによく使われます。重曹の弱アルカリ性の性質が、食材の組織を柔らかくし、繊維を分解することで、えぐみや苦味といったアク成分を抜けやすくするのです。
- 得意な食材:ワラビ、ゼンマイなどの山菜、たけのこ、豆類を柔らかく煮る時など。
- 効果:アクを抜き、調理時間を短縮し、食感を柔らかく仕上げる。
ミョウバンの役割:煮崩れを防ぎ、色を鮮やかにする
一方、ミョウバンは酸性の性質を持ち、組織を引き締める「収れん作用」があります。この作用を利用して、食材の煮崩れを防いだり、野菜の色素を安定させて発色を良くしたりする目的で使われます。
- 得意な食材:栗の甘露煮、ナスの漬物、レンコンやゴボウのアク抜き(変色防止)など。
- 効果:形をきれいに保ち、鮮やかな色を維持する。シャキシャキとした食感を残す。
覚え方のポイント
「柔らかくしたいなら重曹」「形と色を保ちたいならミョウバン」と覚えると、料理での使い分けがしやすくなります。
風呂掃除での活用法
お風呂場の汚れは、大きく分けると「酸性の汚れ」と「アルカリ性の汚れ」に分類できます。ここでも、ミョウバンと重曹の性質を理解していれば、効果的に掃除を進めることが可能です。
皮脂汚れ・黒ずみ(酸性の汚れ)には重曹
浴槽のザラザラや床の黒ずみの主な原因は、体から出る皮脂や石鹸カスです。これらは酸性の性質を持っているため、反対の性質を持つアルカリ性の重曹が非常に効果的です。
使い方:
少量の水で練ってペースト状にした重曹を、スポンジやブラシにつけて気になる部分をこすり洗いします。重曹の粒子による穏やかな研磨作用と、酸を中和する化学作用で汚れをスッキリ落とすことができます。
水垢・鏡のウロコ(アルカリ性の汚れ)にはミョウバン
蛇口や鏡、浴槽の壁などに付着する白く硬い汚れは「水垢」です。これは水道水に含まれるカルシウムなどのミネラル分が固まったもので、アルカリ性の性質を持っています。そのため、酸性のミョウバン水(またはクエン酸)で中和して落とすのが正解です。
使い方:
10倍程度に薄めたミョウバン水を水垢にスプレーし、しばらく放置します。汚れが緩んだところをスポンジなどでこすり落としましょう。頑固な汚れには、ミョウバン水を染み込ませたキッチンペーパーでパックするとより効果的です。
ミョウバンの代わりに重曹は使える?

ここまで解説してきた通り、ミョウバンと重曹は性質が真逆であるため、基本的にはお互いを代用することはできません。もし間違って代用してしまうと、期待した効果が得られないばかりか、逆効果になってしまうこともあります。
代用するとどうなる?失敗例
- ナスの漬物:色を鮮やかに保つミョウバンの代わりに重曹を使うと、アルカリ性の作用でナスの色素(アントシアニン)が分解され、色が抜けてくすんだ仕上がりになってしまいます。
- トイレのアンモニア臭消し:アルカリ性のアンモニア臭に、同じアルカリ性の重曹を使っても中和反応は起きず、消臭効果はほとんど期待できません。
- 水垢落とし:アルカリ性の水垢に、同じアルカリ性の重曹を使っても汚れは中和されず、研磨作用で多少削り取れる程度です。
このように、それぞれの得意分野は化学的な性質に基づいています。レシピや掃除の方法で「ミョウバン」と指定されている場合はミョウバンを、「重曹」と指定されている場合は重曹を使うのが、成功への一番の近道です。
混ぜると起こる化学反応とは?
「消臭効果があるなら、両方混ぜたら最強なのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。酸性のミョウバンとアルカリ性の重曹を混ぜ合わせると、お互いの性質を打ち消し合う「中和反応」が起こります。
具体的には、水溶液の中で混ぜると、二酸化炭素の泡(炭酸ガス)が発生し、シュワシュワと発泡します。これは、酸と炭酸水素ナトリウム(重曹)が反応して起こる典型的な化学反応です。
この中和反応によって、ミョウバンは酸性の力を失い、重曹はアルカリ性の力を失ってしまいます。つまり、アルカリ性の臭いを消す力も、酸性の臭いを消す力も、どちらもなくなってしまうのです。結果として、ただの「中性の液体」に近づくだけで、期待した消臭効果は得られません。
お風呂掃除などで、この発泡作用を利用して汚れを浮かせる、というテクニックもありますが、これは上級者向け。基本的には、消臭やそれぞれの性質を活かした使い方をする場合は、「混ぜずに単独で使う」と覚えておきましょう。
ミョウバンと重曹の違いを総括
この記事では、ミョウバンと重曹の性質の違いから、具体的な使い分けまでを詳しく解説しました。最後に、記事の要点をリストで振り返ります。
- ミョウバンと重曹は見た目が似ている白い粉
- しかし性質はミョウバンが酸性、重曹がアルカリ性で正反対
- 消臭は臭いの種類で使い分けるのが基本
- 酸性の臭い(足の蒸れ・皮脂)にはアルカリ性の重曹
- アルカリ性の臭い(アンモニア)には酸性のミョウバン
- ミョウバンは殺菌作用と制汗作用で臭いの元にアプローチ
- 重曹は発生した酸性の臭いを中和して消臭
- ワキガの根本治療にはならないが一時的な対策にはなる
- 料理のアク抜きでも役割が違う
- 重曹は食材を柔らかくする効果
- ミョウバンは煮崩れ防止や色止めの効果
- 風呂掃除では酸性の皮脂汚れに重曹
- アルカリ性の水垢にはミョウバンが有効
- 性質が逆なので基本的には代用できない
- 混ぜると中和反応が起きお互いの効果を打ち消し合う
- それぞれの特性を理解して正しく使い分けることが重要
