ドライアイスに洗剤をかけるとどうなるのか、興味を持つ方も多いのではないでしょうか?
またドライアイスでなぜ温められるのか、また、コップに洗剤とドライアイスを入れると大量の泡が発生する理由について知りたいと思っているのではないでしょうか。
この実験に関する様々な遊び方も紹介されていますが、同時に危険性についても警告されています。例えば、ドライアイスを水道に流してもいいのか、あるいはやってはいけないことは何か、といった安全に関する疑問もあるでしょう。
この記事では、そうした実験の原理から、シャボン玉を使った楽しい応用、さらには産業分野で活用されるドライアイス洗浄のメリットや、業務用の洗浄方法に至るまで、幅広く解説します。
- ドライアイスが昇華する原理と泡立つ仕組み
- 洗剤を使ったシャボン玉ドームなどの安全な遊び方
- ドライアイスを取り扱う際の具体的な危険性と禁止事項
- 産業用ドライアイス洗浄のメリットと概要
ドライアイスと洗剤の実験と原理

- なぜ温められる?
- コップと洗剤で泡が出る理由
- ネットのコピペで見る実験
- 楽しい遊び方と実験アイデア
- シャボン玉ドームの作り方
なぜ温められる?
ドライアイスを洗剤や水に入れると、まるで沸騰しているかのように激しく反応します。これはドライアイスが「温められる」ことで起こる現象です。
ドライアイスは、二酸化炭素を冷却して固体にしたもので、その温度は約-79℃という極低温です。(参照:日本産業・医療ガス協会)
一方、私たちが普段使う水や洗剤の温度が仮に20℃だとすると、両者の間には約100℃もの著しい温度差があります。
このため、ドライアイスを液体に入れると、ドライアイスは液体から急激に熱を奪い、一気に温められます。ドライアイスは氷と違い、液体にならずに固体から直接気体(二酸化炭素ガス)に変わる「昇華(しょうか)」という性質を持っています。(参照:国立科学博物館 サイエンスミュージアムネット)
そして、昇華して気体になると、体積が元の約750倍にも膨らむのです。この急激な体積膨張が、液体の中で激しい反応のように見えます。
コップと洗剤で泡が出る理由
ドライアイスを水に入れただけでは白い煙(水蒸気が冷やされたもの)が主に出ますが、そこに洗剤を加えると、大量の泡が発生します。
理由は、洗剤が持つ「界面活性剤」の働きにあります。水だけの場合、ドライアイスから発生した二酸化炭素ガス(気体)は、水の表面張力によって弾かれ、大きな泡となってすぐに水面で割れてしまいます。
しかし、洗剤を水に溶かすと、水の表面張力が弱まると同時に、泡の膜が洗剤によって強くなります。前述の通り、ドライアイスは昇華によって約750倍の体積のガスを発生させ続けるため、洗剤によって強化された「割れにくい泡」が連続的に作られ、コップから溢れ出すほど大量に発生する仕組みです。
泡が発生するメカニズム
- ドライアイスが液体(水)で温められ、昇華して二酸化炭素ガスが発生する(体積750倍)。
- 洗剤が水の表面張力を弱め、泡の膜を強くする。
- 発生したガスが、洗剤によって作られた「割れにくい泡」となり、連続的にあふれ出す。
ネットのコピペで見る実験
インターネットの掲示板などでは、ドライアイスと洗剤の実験に関するコピペ(コピー&ペーストで広まった定型文)が見られることがあります。
その中には、「ドライアイスをポコポコさせるのが楽しい」という書き込みに対し、「そこに洗剤を垂らすと…」と続くものがあります。そして最終的に「台所を掃除しに来い」という結末で終わる内容が有名です。
これは、実験の面白半分で台所のシンクなどで試した結果、発生した大量の泡がシンクから溢れ出し、収集がつかないほどの大惨事になった様子をユーモラスに描いたものです。
このコピペは、ドライアイスと洗剤の組み合わせがいかに強力な泡を生み出すかを示唆しています。ご家庭で試す際は、必ずお風呂場や屋外など、泡が大量に溢れても問題ない場所を選ぶようにしましょう。
単純に、このコピペは笑い話としてだけでなく、実験を行う際の注意点を示す教訓としても役立ちます。
楽しい遊び方と実験アイデア
ドライアイスと洗剤を使った遊びは、泡をあふれさせるだけではありません。他にも安全に楽しめる実験アイデアがいくつか存在します。
例えば、ドライアイスを使った他の実験として以下のようなものがあります。
ドライアイスシャーベット
ジュースに細かく砕いたドライアイスを入れて混ぜると、シュワシュワとした炭酸シャーベットを作ることができます。ただし、ドライアイスの塊を絶対に口に入れないよう、大人が注意深く見守る必要があります。
鳴るコイン
ドライアイスの上にコインなどの金属を立てると、金属がドライアイスを昇華させ、そのガスの力でコインが振動し、「ジージー」と音を立てます。金属が冷え切ると音は止まります。
浮かぶシャボン玉
容器にドライアイスを入れ、煙が溜まったところにシャボン玉を吹くと、シャボン玉が割れずに煙の上でプカプカと浮かびます。これは、シャボン玉の中の空気よりも、ドライアイスから発生した二酸化炭素の方が重いために起こる現象です。
これらの実験は、子供の自由研究のテーマとしても人気があります。ただし、どの実験を行う場合でも、後述する安全上の注意点を必ず守ってください。
シャボン玉ドームの作り方
ドライアイスと洗剤を使った実験の中で、特に視覚的に面白いのが「シャボン玉ドーム」です。
これは、容器の中で発生させたドライアイスの煙(昇華した二酸化炭素と冷やされた水蒸気)を、洗剤で作った膜で閉じ込める実験です。
シャボン玉ドームの作成手順
- 準備:ボウルやバケツなどの縁が滑らかな容器に、ドライアイスと少量の水(またはお湯)を入れます。煙が勢いよく出始めます。
- 膜を張る:食器洗い用の中性洗剤を水で薄めたシャボン液を用意します。洗剤液に浸した布やタオルで、容器の縁をぐるっと一周濡らします。
- ドーム作成:洗剤液に浸した布を、容器の片方の縁から反対側の縁に向かって、ゆっくりと滑らせるようにして膜を張ります。
- 観察:容器の中で発生し続けるガスによって、シャボン玉の膜がドーム状に大きく膨らんでいきます。
うまく膜が張れると、プルンとした見た目の大きなドームが完成します。最終的には膨らみ続けたドームが弾け、中のスモークが一気に溢れ出す様子も観察できます。
ドライアイスと洗剤の注意点と応用

- やってはいけないこと
- 密閉や酸欠の危険
- ドライアイスを水道に流してもいい?
- 産業用ドライアイス洗浄とは
- ドライアイス洗浄のメリット
- ドライアイスと洗剤の安全な使い方
やってはいけないこと
ドライアイスは非常に低温であり、取り扱いには細心の注意が必要です。安全に関わるため、絶対にやってはいけないことがいくつかあります。
まず、素手で絶対に触らないでください。ドライアイスの温度は約-79℃と超低温のため、素手で触れると皮膚の細胞が凍結し、「凍傷(とうしょう)」を引き起こします。これは火傷(やけど)と同じくらい深刻な怪我につながる可能性があります。取り扱う際は、必ず厚手の乾いた手袋(オーブンミトンや防寒手袋など)を使用してください。
また、お子様やペットの手の届くところに放置しないでください。見た目が氷や煙と似ているため、興味本位で触ったり、誤って口に入れたりする危険があります。
警告:凍傷の危険性
ドライアイスを素手で掴むと、短時間でも皮膚に張り付き、重度の凍傷になる恐れがあります。万が一触れてしまった場合は、こすらずに、すぐにぬるま湯でゆっくりと温め、異常があれば医療機関を受診してください。(参照:日本産業・医療ガス協会)
密閉や酸欠の危険
ドライアイスの取り扱いで最も警戒すべき危険が、密閉による破裂と酸欠(二酸化炭素中毒)です。
密閉容器の危険性
前述の通り、ドライアイスは昇華すると体積が約750倍に膨らみます。このため、ペットボトルやビン、クーラーボックスなどの密閉できる容器にドライアイスを入れることは絶対に禁止されています。
容器内部の圧力が急激に高まり、容器が破裂・爆発する恐れがあり、非常に危険です。飛び散った破片で失明や重傷を負った事故も報告されています。(参照:東京消防庁 防災情報)
換気の悪い場所での危険性
ドライアイスから発生する二酸化炭素は、空気よりも重い気体です。そのため、換気の悪い室内や地下室、車内などに置くと、床の近くに二酸化炭素が溜まります。
空気中の二酸化炭素濃度が高くなると、酸素欠乏(酸欠)や二酸化炭素中毒を引き起こし、頭痛やめまい、最悪の場合は意識を失い死亡する危険性もあります。実験や遊びで使用する際は、必ず窓を開けるなど、換気を十分に行ってください。
特に危険なシチュエーション
- 車での運搬:ドライアイスを車で運ぶ際は、窓を開けて常に換気する。トランクに入れる場合も、客室と分離されていない車種(ハッチバックなど)は危険です。
- 密室での使用:お風呂場などで実験する際は、必ず換気扇を回し、ドアも開けて空気が流れるようにしてください。
- 就寝時の使用:冷却目的であっても、就寝時に室内にドライアイスを置くのは絶対にやめてください。
(参照:厚生労働省 職場のあんぜんサイト 化学物質情報 など)
ドライアイスを水道に流してもいい?
実験が終わった後や、余ったドライアイスの処分に困ることがあるかもしれません。しかし、ドライアイスを台所のシンクや排水口、トイレなどに直接流すのは絶対にやめてください。
約-79℃の超低温であるドライアイスが排水管に触れると、配管が急激に冷却されて収縮し、ひび割れや破損を引き起こす可能性があります。
特に、住宅設備で一般的に使われている塩化ビニル素材(塩ビ管)は温度変化に弱いため、破損のリスクが高まります。ドライアイスを処分する際は、シンクなどに流さず、風通しの良い場所(ベランダや屋外など)に放置し、自然に昇華させて消滅させるのが最も安全な方法です。
産業用ドライアイス洗浄とは
ドライアイスの特性は、家庭での実験だけでなく、産業分野でも「洗浄」技術として応用されています。これが「ドライアイス洗浄(ドライアイスブラスト)」と呼ばれるものです。(参照:理化学研究所)
この技術は、研磨材や溶剤(洗剤)の代わりに、細かく砕いたドライアイスの粒子(ペレット)を圧縮空気で高速噴射し、対象物の汚れを除去します。
ドライアイス洗浄機(ブラスター)から噴射された粒子が汚れに衝突すると、主に以下の3つの力で汚れを剥がします。
| 洗浄の原理 | 概要 | 
|---|---|
| 衝撃力 | 高速で衝突したドライアイス粒子が、汚れの層に微細なひび割れを入れます。 | 
| 急冷剥離(ヒートショック) | -79℃の粒子が衝突することで汚れが急冷され、もろくなります。また、洗浄対象の素材と汚れの熱収縮率の違いを利用し、汚れを浮き上がらせます。 | 
| 膨張粉砕(昇華力) | ひび割れに入り込んだドライアイスが一瞬で昇華し、体積が約750倍に膨張する力で、汚れを内側から爆砕・剥離させます。 | 
このように、物理的な力と熱的な力、昇華する力を組み合わせて、強力な洗浄効果を発揮します。
ドライアイス洗浄のメリット
産業用のドライアイス洗浄は、従来の洗浄方法(水洗浄、溶剤洗浄、サンドブラストなど)と比較して、多くのメリットがあります。
最大の特長は、残留物(二次廃棄物)が出ないことです。水や洗剤、研磨材(砂など)と違い、ドライアイスは昇華して気体(二酸化炭素)になるため、洗浄後に残るのは剥がれた汚れだけです。これにより、洗浄後の拭き取りや排水処理の手間が不要になります。
また、ドライアイスは研磨材に比べて柔らかいため、洗浄対象の素材(金型や精密機器など)を傷つけることがありません(非研磨性)。
ドライアイス洗浄の主なメリット
- 残留物ゼロ:昇華するため、洗浄後の廃液や研磨材の回収が不要。
- 非研磨性:金型や設備など、対象物を傷つけずに汚れだけを除去できる。
- 非導電性:電気を通さないため、通電中の設備や電子部品の洗浄も可能。
- 乾燥不要:水を使わないため、洗浄後の乾燥工程が不要。
- 高温洗浄:高温状態の金型を冷まさずに洗浄でき(ヒートショック効果)、ダウンタイム(設備停止時間)を大幅に短縮できる。
- 環境負荷低減:溶剤や洗剤を使用しないため、作業者の安全性が高く、環境にも優しい。
これらの理由から、ドライアイス洗浄は食品工場のライン、自動車部品の金型、半導体製造装置、印刷機などの洗浄に幅広く活用されています。
ドライアイスと洗剤の安全な使い方
この記事では、ドライアイスと洗剤を使った実験の原理から、産業応用、そして最も重要な安全な取り扱い方について解説しました。最後に、安全に楽しむためのポイントをまとめます。
- ドライアイスと洗剤の実験は泡が大量に発生する
- 泡が出る理由はドライアイスの昇華(体積750倍)と洗剤の界面活性剤
- 実験はコピペネタになるほど泡が溢れる可能性がある
- 実施場所はシンクでなくお風呂場や屋外を選ぶ
- ドライアイスが温められるのは水との温度差(約100℃)が原因
- シャボン玉ドームなど安全な遊び方もある
- 二酸化炭素は空気より重いためシャボン玉が浮く
- ドライアイスの取り扱いでは「やってはいけないこと」を厳守する
- 危険性として凍傷、破裂、酸欠(二酸化炭素中毒)がある
- 絶対に素手で触らず厚手の乾いた手袋を使用する
- ペットボトルなど密閉容器には絶対に入れない
- 車内や密室では使用せず必ず十分な換気を行う
- ドライアイスを水道に流してもいい?という疑問の答えは「NO」
- 排水管が破損する恐れがあるため処分は自然昇華させる
- ドライアイス洗浄は産業用の技術でメリットが多い
- 洗浄(ブラスト)は残留物が出ず対象物を傷つけない


 
		 
			 
			 
			 
			 
			 
			