庭の景観を損ね、他の植物の生育まで脅かす厄介な雑草、ヤブガラシ。そのしつこさに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
ヤブガラシの駆除に重曹が使えるという話を聞き、安全な方法を探している方もいるかもしれません。しかし、本当に重曹で効果があるのか、重曹を土に撒くとどうなるのか、また重曹水で除草するデメリットはないのか、気になりますよね。
そもそも、ヤブガラシを根まで枯らすには一体どうすれば良いのでしょう。
この記事では、塩や効果的な除草剤を使う方法、駆除に最適な時期、おすすめの根っこを枯らす除草剤の選び方まで、あらゆる角度から解説します。
さらに、除草剤を効率的に吸わせる方法、ヤブガラシは冬枯れるのか、天敵は存在するのか、そして意外にも地下茎を食べる文化があるのかといった、様々な疑問にもお答えします。
- 重曹を使ったヤブガラシの駆除方法とその注意点
- 重曹以外の安全な駆除方法との比較
- 除草剤を使った効果的な根絶アプローチ
- ヤブガラシの生態と再発防止策

ヤブガラシの駆除に重曹は有効か?
- 重曹を土に撒くとどうなる?
- 重曹水で除草するデメリット
- 塩での駆除は土壌に影響も
- 天敵を利用した自然な駆除法
- 意外な活用法、地下茎は食べる?
重曹を土に撒くとどうなる?

結論から言うと、重曹を土に撒くと土壌がアルカリ性に傾き、一部の雑草の生育を抑制する効果が期待できます。
なぜなら、ヤブガラシを含む多くの雑草は、弱酸性から中性の土壌を好んで生育するためです。そこに重曹(炭酸水素ナトリウム)を撒くと、土壌のpHバランスが変化し、雑草にとって育ちにくい環境が作られます。また、高濃度の重曹水が植物にかかると、細胞内の水分が奪われる浸透圧の作用により、葉や茎を枯らす効果もあります。
例えば、水1リットルに対して100g〜150g(濃度10%〜15%)ほどの重曹を溶かした重曹水を作り、ジョウロやスプレーでヤブガラシに直接散布するのが一般的な使い方です。食品にも使われる成分のため、小さなお子様やペットがいるご家庭でも、除草剤に比べて安心して使用しやすい点がメリットと言えるでしょう。
重曹による土壌のアルカリ化は、ヤブガラシだけでなく、周辺で育てている他の植物にも影響を与える可能性があります。特に酸性の土壌を好むブルーベリーやツツジなどの近くでは使用を避けるべきです。意図しない植物まで枯らしてしまうリスクがあるため、使用する場所は慎重に選びましょう。
重曹水で除草するデメリット
手軽で安全なイメージのある重曹ですが、ヤブガラシの駆除に使う際にはいくつかのデメリットが存在します。最も大きなデメリットは、即効性が低く、根まで完全に枯らすのが難しいという点です。
重曹は、触れた葉や茎を枯らすことはできても、その効果が地下深くまで張り巡らされたヤブガラシの強靭な地下茎にまで達することはほとんどありません。そのため、一時的に地上部が枯れたように見えても、地下茎が生きている限り、すぐに新しい芽が出てきて再生してしまいます。
他にも、以下のようなデメリットが挙げられます。
- 広範囲の駆除には向かない:広い範囲に散布するには、大量の重曹と手間が必要になり、コストパフォーマンスが悪くなります。
- 効果にムラが出やすい:雑草の表面を傷つけてから散布するなど、効果を高めるには工夫が必要で、均一に枯らすのが難しい場合があります。
- 根気が必要:一度の散布で効果が出ないことも多く、完全に枯らすには何度も繰り返し作業を行う必要があります。
これらの理由から、重曹での駆除は、発生初期の小さなヤブガラシや、他の植物が近くになく、根気強く対処できる範囲に限定して試すのが現実的と言えるでしょう。
塩での駆除は土壌に影響も

重曹と同じく、家庭にある塩を使って除草する方法を聞いたことがあるかもしれません。確かに塩には除草効果がありますが、ヤブガラシの駆除に安易に使用することは絶対におすすめできません。
その理由は、塩が土壌に深刻な「塩害」を引き起こすためです。土壌に撒かれた塩(塩化ナトリウム)は、雨などで分解されることなく長期間残留します。塩分濃度の高くなった土では、植物は浸透圧の原理で根から水分を吸収できなくなり、ヤブガラシだけでなく、周辺の樹木や花、野菜など全ての植物が枯れてしまいます。一度塩害が起きた土壌を元に戻すには、大変な時間と労力がかかります。
塩害の影響は植物だけにとどまりません。コンクリートやレンガを劣化させたり、地中の水道管(金属製の場合)を腐食させたりする危険性も指摘されています。建物の基礎部分の近くなどで使用すると、思わぬ二次被害につながる可能性もあるため、除草目的での塩の使用は避けましょう。
天敵を利用した自然な駆除法
「ヤブガラシを食べてくれる虫や動物がいれば…」と考える方もいるかもしれませんが、残念ながら、現状ではヤブガラシの繁殖をコントロールできるほどの決定的な天敵は存在しません。
もちろん、自然界にはヤブガラシを食べる生物もいます。例えば、ヨトウムシなどの一部の蛾の幼虫が葉を食べることがありますが、その強靭な繁殖スピードを上回るほどの食欲はなく、駆除と呼べるほどの効果は期待できないのが実情です。ヤブガラシの蜜を求めてスズメバチやアシナガバチが集まることはありますが、これらは受粉を助けることはあっても、植物自体を減らす役割は担いません。
雑草の防除に天敵昆虫などを利用する「生物的防除」という研究分野は存在します。しかし、ヤブガラシを対象とした実用化には至っていません。外来の天敵を導入すると、日本の生態系に予期せぬ悪影響を及ぼすリスクがあるため、導入には極めて慎重な調査が必要となるからです。そのため、現時点では天敵に頼った駆除は非現実的と言わざるを得ません。
意外な活用法、地下茎は食べる?
駆除の対象として厄介者扱いされるヤブガラシですが、実は春に出る赤い新芽は、山菜として食べることができます。
主に食べられるのは、まだ葉が開ききっていない、アスパラガスのような見た目の若い茎(つる)の部分です。ワラビやゼンマイのように、古くから日本の食文化の一部として利用されてきた歴史があります。
主な食べ方
代表的な調理法は、さっと茹でてアク抜きをした後のおひたしや和え物です。少しぬめりがあり、クセのない味わいが特徴です。他にも、天ぷらや炒め物にしても美味しくいただけます。駆除作業の際に、食べられそうな新芽を見つけたら収穫してみるのも一つの手かもしれません。
食べる際の注意点
ヤブガラシには、ほうれん草などにも含まれる「シュウ酸」という成分が含まれています。シュウ酸の過剰摂取は、体質によって尿路結石の原因になる可能性も指摘されています。そのため、必ずアク抜き(茹でて水にさらすなど)を行い、一度に大量に食べるのは避けるようにしましょう。なお、硬く繊維質な地下茎は、一般的に食用には適していません。
駆除対象の雑草が食べられるというのは面白いですね!ただ、食べる場合は除草剤を散布していない場所のものを選ぶなど、安全性には十分注意してくださいね。
ヤブガラシ駆除、重曹以外の根絶方法
- ヤブガラシを根まで枯らすには?
- 駆除時期と冬に枯れるかの疑問
- 除草剤を使った基本的な駆除法
- おすすめの根っこを枯らす除草剤
- 除草剤を直接吸わせる裏ワザ
ヤブガラシを根まで枯らすには?

ヤブガラシを根絶するための最も重要なポイントは、「地下茎」をいかにして攻略するかに尽きます。地上に見えているつるを刈り取っただけでは、まるでトカゲの尻尾のように、地下に残った根から何度でも再生してしまいます。
根まで枯らすには、大きく分けて2つのアプローチが有効です。
- 物理的に地下茎を除去する
スコップや鍬を使い、地中深くに伸びる地下茎を根気よく掘り起こす方法です。時間はかかりますが、薬剤を使いたくない場合には最も確実な手段と言えます。特に雨が降った後など、土が柔らかくなっている時に作業すると、根が抜きやすくなります。掘り起こした根は、その場に放置せず、必ずゴミとして処分しましょう。 - 浸透移行性の除草剤を使用する
葉や茎に散布した薬剤が、植物内部を通って根まで届き、株全体を枯らすタイプの除草剤です。広範囲に広がってしまったヤブガラシを効率的に駆除するのに適しています。後述するグリホサート系の除草剤がこのタイプに該当します。
前述の通り、重曹や熱湯、塩などを使った方法は、主に地上部を枯らすだけで地下茎への効果は限定的です。本気で根絶を目指すのであれば、「掘り起こす」か「根まで枯らす除草剤を使う」の二択が基本戦略となります。
駆除時期と冬に枯れるかの疑問
ヤブガラシの駆除を効率的に行うには、その生態サイクルに合わせたタイミングで作業することが非常に重要です。
最適な駆除時期は「春〜初夏」と「秋」
ヤブガラシの駆除に最も適した時期は、成長が活発になる4月〜6月頃と、冬に向けて地下茎に栄養を蓄え始める9月〜10月頃の2回です。
- 春〜初夏(4月〜6月):新芽が伸び、光合成が最も盛んになる時期です。このタイミングで除草剤を散布すると、葉から薬剤が吸収されやすく、根までしっかりと成分が行き渡ります。
- 秋(9月〜10月):植物が冬越しのために、葉で作った栄養を地下茎へと送り返す時期です。この時に除草剤を使うと、栄養の流れに乗って薬剤が効率よく地下茎に運ばれ、根を枯らす効果が高まります。
冬のヤブガラシの状態
「ヤブガラシは冬に枯れるのか?」という疑問ですが、答えは「地上部のみ枯れて、根は生き残る」です。ヤブガラシは多年草であり、冬になると地上に見えているつるや葉は枯れてなくなります。しかし、地下茎は休眠状態で冬を越し、春になると再びそこから芽を出します。冬に見た目が綺麗になったからといって放置すると、翌春にはさらに勢力を増して繁茂してしまうため、油断は禁物です。
除草剤を使った基本的な駆除法

除草剤を使ってヤブガラシを駆除する場合、正しい種類の薬剤を、適切な方法で使うことが成功のカギとなります。
ヤブガラシに効果的なのは、葉や茎に直接散布して根まで枯らす「茎葉処理剤(けいようしょりざい)」、特に「浸透移行性(しんとういこうせい)」と呼ばれるタイプです。
除草剤散布の基本ステップ
- 準備:長袖・長ズボン、手袋、マスク、保護メガネを着用します。薬剤が他の植物にかからないよう、必要であればビニールなどで養生します。
- 希釈:製品ラベルの指示に従い、正しい濃度で薬剤を水に薄めます。(原液のまま使えるシャワータイプもあります)
- 散布:風のない晴れた日を選び、ヤブガラシの葉全体がしっとりと濡れるように、ムラなく散布します。雨が降ると薬剤が流れてしまうため、散布後少なくとも6時間は雨が降らない日を狙いましょう。
- 放置:散布後、すぐに枯れなくても、無理に抜き取ったり刈り取ったりせず、薬剤が根まで浸透するのを待ちます。効果が現れるまでには数日〜2週間ほどかかります。
重要なのは、ヤブガラシが元気に葉を茂らせている時期に散布することです。草刈りをした直後など、葉が少ない状態では薬剤を十分に吸収できず、効果が半減してしまいます。ある程度成長させてから散布するのが効果的です。
おすすめの根っこを枯らす除草剤
ヤブガラシのようなしつこい雑草の根を枯らすのに最も広く使われ、効果が実証されている成分が「グリホサート」です。
グリホサートは、植物にしか存在しないアミノ酸の合成を阻害する作用があり、葉から吸収されると成長点や根へと移行して、最終的に株全体を枯死させます。土に落ちた成分は、微生物によって速やかに分解されるため、土壌への残留が少ないのも特徴です。
ここでは、グリホサートを主成分とする代表的な除草剤をいくつかご紹介します。
商品名(例) | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
ラウンドアップマックスロード | グリホサート系除草剤の代表格。吸収が早く、散布後1時間程度の雨なら効果が落ちにくいとされています。農耕地登録があり、畑などでも使用可能です。 | 農耕地・非農耕地 |
サンフーロン | ラウンドアップのジェネリック品として知られ、コストパフォーマンスに優れています。効果は同等とされており、広範囲に使いたい場合におすすめです。農耕地登録あり。 | 農耕地・非農耕地 |
(各社ホームセンターのPB商品など) | 比較的安価な非農耕地用の除草剤。グリホサートが主成分であることが多いです。庭や駐車場、空き地など、作物を育てない場所での使用に限定されます。 | 非農耕地 |
除草剤を選ぶ際は、必ずラベルを確認し、「農耕地用」か「非農耕地用」かを確認してください。畑や家庭菜園で使う場合は、必ず農林水産省の登録がある「農耕地用」の製品を選びましょう!

除草剤を直接吸わせる裏ワザ
「除草剤を使いたいけれど、近くに大切な庭木や花があって、薬剤が飛散するのが心配…」そんな場合に試してみたいのが、ヤブガラシに薬剤をピンポイントで直接吸わせる方法です。
この方法の最大のメリットは、周囲の植物への影響を最小限に抑えながら、ヤブガラシだけを狙い撃ちできる点にあります。いくつかの具体的な手法を見ていきましょう。
方法1:切り口に原液を塗る
ヤブガラシのつるを地面から少し上の位置でハサミで切り、その切り口に除草剤の原液(または濃いめに希釈したもの)を、筆や刷毛、綿棒などを使って丁寧に塗りつけます。切り口から直接薬剤が吸収されるため、非常に高い効果が期待できます。太いつるほど効果的です。
方法2:袋や容器で吸わせる
ヤブガラシのつるの先端をいくつかまとめ、除草剤の希釈液を入れた小さなビニール袋やペットボトルの中に入れ、口を輪ゴムや紐で縛って固定します。こうすることで、植物が水を吸い上げるのと同じように、つるの先端から薬剤を継続的に吸収させることができます。
この方法のコツ
作業は、植物の活動が活発な日中に行うのがおすすめです。また、手や皮膚に薬剤が付かないよう、必ずゴム手袋などを着用して作業してください。地道な作業ですが、大切な植物を守りながら厄介なヤブガラシだけを駆除したい場合に非常に有効なテクニックです。
ヤブガラシの駆除と重曹の使い方を総括
この記事では、ヤブガラシの駆除における重曹の使い方から、より確実な根絶方法までを詳しく解説しました。最後に、記事の要点をリストで振り返ってみましょう。
- ヤブガラシ駆除に重曹は使えるが効果は限定的
- 重曹は土壌をアルカリ性に変化させる
- 重曹のデメリットは即効性が低く根まで枯らせない点
- 塩での駆除は塩害リスクが非常に高く非推奨
- ヤブガラシは冬に地上部が枯れても根は生き残る
- 春になると地下の根から再び再生する
- 駆除の最適な時期は成長期の春〜初夏と秋
- 根絶には強靭な地下茎の除去が不可欠
- 最も確実な方法は浸透移行性の除草剤
- 根まで枯らすグリホサート系除草剤がおすすめ
- 薬剤を直接切り口に塗ったり吸わせる方法も有効
- 除草剤は用法用量を守り周辺環境に配慮して使用する
- ヤブガラシの赤い新芽は山菜として食用にもなる
- 食べる際はシュウ酸に注意しアク抜きを行う
- 根気強い継続的な対策が駆除成功への一番の近道
